【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
アスター王子がわりとすぐに駆けつけてきたのは、わたしのメダリオンにかけた魔術で感知したからだろう。心配してくださった事は嬉しいし、最優先で駆けつけた事も正直幸せに感じる……けれども。
「アスター王子、ご心配くださってありがとうございます。ですが、今は大切なお仕事の最中ではないのですか?」
ご婚姻の儀まであと一週間しか無い。諸外国から招く賓客や王侯貴族という最重要人物を護るべき近衛騎士団の幹部が、いちいち個人的な些事で仕事を抜け出すなど、あってはならない事だ。
いくらわたしが部下で婚約者とはいえ、まだ従騎士の男爵令嬢に過ぎないのだから。
わたしがそんなふうに叱責していると、アスター王子はしゅんと萎れた葉っぱのようになってしまう。二十歳すぎの大の大人がそんなふうになっても可愛くないのですが…。
「……すまない。盛られた毒が通常のものではなく、悪意と魔力を感じたものだからついつい……」
「魔力……ですか?」
アスター王子のおっしゃった言葉から、わたしもハッと思い当たることがある。水を飲もうと水筒を手にした瞬間に違和感を感じたこと。水を飲む直前で、異様な匂いを感じた気がする。
ジョワン医師は無味無臭の毒とおっしゃった。それはたぶん、物質的には正しいのだろう。
おそらく、今回気づけたのはアスター王子の防御魔術の他に、ブラックドラゴンの魔力がわたしに馴染んできたからだろう。
つまるところわたしにもともと魔力は無いけれども、ブラックドラゴンの魔力のおかげで魔術に関して少し理解できるようになってきたという事だ。