捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
名前
「アクア、ごめんね?」
「ヒヒン?」
翌朝。馬のお世話をするために厩舎を訪れた時、思わずアクアに謝罪していた。
当然何のことだ、とアクアは不思議そうな顔をしていたけれども…。
「あなたの仔馬……やっぱり寂しいみたい。お母さんと一緒にいたいんだって」
「ブフッ」
そうか、とアクアは答えた気がする。
母馬なのだから、おそらく彼女は仔馬の気持ちに気づいているはずだ。それでも大人しく厩舎の中に…わたしのそばにいるのは、騎馬だからだ。
「アクア、あなたはどうしたい?本当の気持ちを教えて欲しい。わたしに育てられたからだとか、そんな恩やわたしの騎馬という役割を抜きに、あなた自身の素直な気持ちを」
たぶん、アクアはわたしの言葉をほぼ理解できている。
以前から、馬ではあり得ないほどの知能の高さを感じていた。それは、幻獣ペガサスの血を引いていたゆえだと今ならば納得できたけど。
「……ヒン」
わたしの話を聞いたアクアは、眉を寄せ(?)考える仕草をする。良くも悪くも馬鹿正直な彼女だから、きっと自分自身の気持ちに素直になるはず。
「ブフッ」
しばらくして鼻息を荒くした彼女は、結論づけた様子。
クイッ、と湖の方を顎で示すから、そちらへ行くぞと言っている様子。どうやら仔馬に直に会って話したいらしい。
(アクアが母馬として仔馬といたくて騎馬をやめたいと決めたなら、ちゃんと答えなきゃね)
寂しいけれども、仕方ない。やっぱり親子ならば一緒にいるべきなんだから。