【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?

「アクア、王宮へ急ごう! 君も……速く走れる?」
「ブヒン」
「ピュッ」

アクアだけじゃなくて仔馬にも問いかけると、2頭ともいいお返事。よし、と頷いたわたしは、自分の身に着けたペンダントを仔馬の首にかけてからこう言った。

「よし、じゃあ誰が一番速くお城に着くか駆けっこしよう!」
「ビヒッ」
「キュ」

どうやら仔馬もアクアの子どもらしく、勝ち気な性格を受け継いでいる様子。わたしが競走を促すと、途端に猛ダッシュで走り出した。

「あ、待って!君、あんまり離れすぎないでね」
「ピュッ」

わかっているよ、とお返事をしてくれたものの、たぶんそのうち無我夢中になってひたすら走るだけになるだろう。アクアの仔馬時代と同じに。

アクアも言わずもがな。めちゃくちゃ速く走ってはいる……ものの、だいぶ全力疾走とは程遠いスピード。やっぱり、仔馬のやや後ろで伴走してる。子どもを護るためなんだろう。

「うん……やっぱり、名前…いるよね」

今の今まで仔馬に名前をつけなかったのは、人間の都合で幻獣の性質を決めていいかわからなかったからだ。高祖母様の騎龍であるセシルのように、パートナーならば信頼もあるし名前をつけても大した影響はない。

けれど、ユニコーンとペガサスの間の子。

かつて関わった父親のユニコーンにも、名前はなかった。
人の言の葉は言霊。霊力が宿ることもある。
名前は、とても大切だ。場合によっては大きな影響を与えかねない。
だから、今の今まで安易な気持ちではつけられなかったんだ。
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