狂おしいくらいの激情を…貴女に
歪み
夜が明けて、充城は青蘭の部屋に向かった。

あんなことを言っておいて、やっぱり毎日のひそかな楽しみを止められないのだ。


しかし青蘭の部屋を、千草達メイドが慌ただしく出入りしていた。

「巴山さん、どうしたんだ?」
千草に声をかけると、千草は鋭く睨み付けダンダンと足音を鳴らし近づいた。

そして間髪入れずに、パン━━━!!!!と絋琉の頬を平手打ちしたのだ。

「……っ…な、なんだよ、急に!」
「ちょっと、こちらへ!」

絋琉の手を乱暴に掴み、引っ張った。

そして使用人室の一室に入った。


「━━━━━どうして、お嬢様を受け入れなかったんですか!!?」

「え?」
千草の瞳は、涙でいっぱいになっていた。

「たった一晩のことでしょ!!?
お嬢様が、どんな思いで充城さんに想いを伝えたと思ってるんですか!!?」

「巴山さん…」

「充城さんは、お嬢様を愛してらっしゃるんですよね!?」

「それは……」

「お嬢様。深夜からずっと…嘔吐と高熱を繰り返してます」

「え………!!!?」

「充城さんのせいですよ!!」

「お嬢様……」
そんなつもりはなかった。
ただ、一晩で終われない。
終われる自信がなかっただけなのだ。

結果的に絋琉の思いは、青蘭を傷つける。

だから、必死に抑えたのだ。

「━━━━━告白なんかしなきゃよかった」

「え?」

「お嬢様、うなされながらそう呟いてました」

「………」

「充城さんに嫌われたって、言ってました。
郡至様と結婚をする前に、ケジメをつけるとおっしゃってて、私だけには全て想いを打ち明けてくれてたんですよ。
成人したら郡至様のモノになる前に、充城さんに抱いてもらうって。
“愛する人に、私の初めてを捧げる”って。
初めてくらい、本当に愛する人としたいからって。
……………なのに!!
どうして!!?」

絋琉は、もう…何も言えなかった。

そんなにまで青蘭を傷つけたことを、今初めて気付いたのだ。


「充城さん、お嬢様がどうして毎日充城さんに服を決めさせるか考えたことがありますか?
お嬢様が、郡至様からの贈り物を一切身につけない理由を考えたことは?
ペアリングも、何故…首につけてるかも。
……………全部、充城さんを想ってた故のことですよ?」


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