大事な大切な人

…北山( 黒野 ) 美鈴


随分、前に
私は不倫をした事がある。

彼は、私が勤務する
レントゲン技師で
格好良くて優しい人だった。

奥さんがいて
「美鈴を愛しているけど
妻が妊娠中で·····
だから、別れられない。」
と、言われて

優しい裕典さんを
妊娠で縛るなんて·····

と、良く考えたら
わかるような事が
当時の私には、わかっていなかった。

裕典さんのマンションに乗り込み
奥さんに詰め寄り暴言をはいた。

奥さんと一緒にいた女性が
裕典さんのお母様だと
わかり慌てて逃げ出したが

後日に

弁護士と言う方から連絡が来て
奥さんがあの後
救急車で運ばれた事と
今後についての事を言われた。

奥さんへ
迷惑料込の見舞い金を
支払う事と
二度と裕典さんに合わない
書面を書く事で終わった。 

私は、病院を辞めて
実家に戻り
実家に近い病院で医療事務をして
働く事にした。

急に戻ってきた娘に
両親は何も言わなかった。

そんな私も今では
二人の子供の母。

夫は、看護師として働いている

男性が増えつつある医療現場では
あるが、まだまだ
女性が多い。

綺麗な看護師さんや
綺麗な事務員さんも
沢山いる。

人様を傷つけたら
自分にも······
因果応報······だろうか?

夫は、病院の飲み会の日
帰って来なかった。

翌日の昼に帰宅した夫は
目を閉じてソファーに座る
私を見て、ギョッとしたのか
その場で土下座をして謝った。

子供達にこんな夫を見せなくて
良かった。
実家に預かって貰っていた。

実は、少し前から
夫が、一人の看護師さんと
妙に近いと
耳に入っていた。

正直、その時に
追求しようかと思った。

その時
あの当時の事が
なぜか、思い出された。

本当に私や子供達が
大事なら·····
大切なら·····
踏みとどまるのでは
ないか·····と。

夫は、一人しゃべり続けていたが

私は、そのまま立ち上がり
玄関から出て
実家へと帰った。

子供達の荷物や自分の着替えは、
実家に運んでいた。

母さんから
「あなた、準備良かったね?」
と、言われて
「因果応報って
   本当にあるんだね?
母さん、温泉でも行こうか?」
と、言うと
少し驚いた顔をした母だが
「渉太(しょうた)
 美久(みく)喜ぶよ。
 一泊しようか?」
と、母と話していると
父と一緒に子供達が
帰ってきて温泉に行く話で
盛り上がっていたが
パパは?と言う二人に
「シフトじゃない。」
と、言うと
残念がっていたが
「「仕事じゃ、仕方ないね。」」
と、言う子供達。

あんな人でも
この子達に取っては
父親なんだと思う。

土日に一泊で
温泉に行った私達を
探し回ったらしい夫は

日曜日の夜に
戻ってきた私達の顔を見て
ボロボロ泣きながら
座り込み
私と私の両親に
頭を下げた。

父からは、かなりの勢いで
殴られて
一週間は、腫れが引かなかった。

正直、離婚しても良いと
思っていた。

家族を大事に
大切にできない人なら
先もない、と。

何も言わない
言葉をはかない
私が酷く怖かったと
後になってきいた。

夫は、病院を辞めて
介護施設の看護師の仕事を
見つけて再就職していた。

私の中で直ぐに許す事は
できなかったが
両親や子供達が
いてくれたから·····

まあ、私に対して
夫の気持ちが無ければ
元サヤなんてありえないけど。
「愛している。」
と、泣く夫を
もう一度だけ
信じて見ようと思えた。


      本当に、終わり
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