可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 声を聞くとだめだ。
 会いたい気持ちが暴走して、居ても立ってもいられなくなる。

 でも、今、その気持ちを正直に伝えてしまったら……

 彼のことだ、無理をしてでも会う算段をするに違いない。
 わたしはぐっとこらえて「宗介さん」と名前を呼ぶだけに留めた。

 イヤフォンの向こうから「舞台の仕事が決まったんだ」という弾んだ声が聞こえてきた。

「そのことを一刻も早く、郁美に知らせたくて」
「わあ、おめでとう。やっと宗介さんの望みが叶うんだ」
「ああ」

 言葉を発してから、ちゃんと明るい声が出せたかどうか、少し心配になった。

 なぜなら、その話を聞いたとき、宗介さんと会う時間がさらになくなってしまう、と真っ先に思ってしまったから。
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