可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 知花はチッチと人差し指を振る。

「だって、超人気芸能人の方からうちの会社にやってくるんですよ! こんなチャンス、宝くじに当たるより確率低いじゃないですか。てことは、声かけられることだってワンチャンないとも限らないでしょ。そのためには最高の自分でお迎えしなきゃ」

 ワンチャンねぇ。
 この無節操なポジティブさ。
 まあ、そこが彼女の長所ではあるけど。

「はいはい、あるかもね。じゃあ、早く仕事始めたほうがいいんじゃない。残業したくないんでしょ?」
「わー、本当だ」

 知花が慌てて席に戻ろうとした、ちょうどそのとき、柴田課長がやってきた。

「橋本くん、きみ、何か急ぎの案件あったっけ」
「北斗繊維の業務改善計画を練っているところですが」

「じゃあ、1日くらいは大丈夫だな。なんとかっていう俳優が取材にやってくるんだ。社長から直々に頼まれてね。その世話係、やってくれないか」
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