このキョーダイ、じつはワケありでして。
「見てこれ。なかなか似合うでしょ」
先輩のスクールバッグにぶら下がっている、今日にも渡されたお揃いのナマコ。
「……思ってたよりいい感じですね」
「…慶音も気が向いたら付けてやって欲しいな」
にしても見ているだけで気が抜けるというか、ちからが抜けるキーホルダーだ。
緑色をしたナマコと、赤色のナマコ。
私に渡されたほうは赤色だった。
ナマコってか……もはやタラコじゃん。
「ふふっ、はい。いつか気が向いたら」
「……固定は作らない主義だったんだけどなあ俺」
「え?」
「なーんでもない。───ほらほら、ちょっと見てよ慶音。あそこ」
次から次に忙しい男だ。
今度はなんだと、指がさされた方向へと目を向けてみれば。
「やっぱり居るんだよ。中には変わったキーホルダーをお揃いにして愛を伝え合ってるカップルは」
初々しく手をつなぐ高校生カップル。
彼らもまた学校帰りの寄り道なのだろう。
彼氏さんのリュックと、彼女さんのスクールバッグに付いている───それはてんとう虫。