このキョーダイ、じつはワケありでして。




「兄ちゃんは…私のために我慢、しすぎなんだよ」


「んー、確かにそれはそうかも。俺が焼き肉ってときはだいたい寿司だし、おまえ」


「…………」


「とくに大晦日の特番。俺はお笑いが観たいってのに、毎年おまえ格闘技でさー。ほんと我慢ばっかだよ俺」


「……うん」


「まあ兄ちゃんがしてる我慢って、それくらいだけど」



それだけ?と、思ってしまった。


その我慢は“きょうだい”であれば誰だって経験済みの我慢だろう。


そうじゃない。

兄ちゃんにしかしてない我慢、あるじゃんか。



「在宅なんかやめて、働きに出たかったでしょ…普通に」


「え、ぜんぜん。まったく。フリーランスの自由度知ったらムリムリ、満員電車がバカらしく思える」


「…飲み会とか行ったり、さ」


「あー、俺が酒飲めないの知らなかったっけ?あんなうるさい場のどこに魅力感じればいいわけよ。だったら俺はおまえとちょっと高めなビュッフェにでも行くって」



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