婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
 わたしは自分の目を疑った。
 目の前には熱く口付けを交わす男女。一人は婚約者であり、この国の第一王子であるシリウス殿下。そして、もう一人はわたしの唯一無二の親友である伯爵令嬢スピカだ。
 二人の身体は『これでもか』ってくらいピタリとくっつき、何度も顔を見合わせては唇を重ねる。昨日今日の関係じゃないことは明白だった。


「二人とも、何してるの?」


 声を震わせながら、わたしは尋ねた。心臓の辺りがザワザワと騒ぎ、喉の辺りが熱くて堪らない。湧き上がってくる何かを必死に抑えながら、わたしは姿勢を正した。


「ポラリス」


 居たのか、とでも言いたげな声音で、殿下は言った。いつもと同じ、穏やかで優し気な表情。焦ったり動揺している様子すら見受けられない。


「何をって……ご覧のとおりですわ」


 そう言ってスピカは殿下をギュッと抱き締め直した。花のような笑みを浮かべ、首を傾げるその様は、どこか妖艶で、わたしの知っているスピカではない。


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