バレンタイン
 ほんとにどうしよう。

 猫は好きよ。

 この子は可愛いし、寒空の下に放っておいたら死んじゃうだろうし、捨て猫に出逢ったなんてのも初めてだし、これもなにかの縁だと思う。


 連れて帰りたい......。


 でも、うちには動物アレルギーの母がいる。

 子供のころから動物を飼いたいとおねだりしては、その度に大きなぬいぐるみで騙されてきた。


 やっぱりダメだよなあ...。


 そう思いながらも足は段ボールのもとから動かない。


 だめだめだめ。

 もし連れて帰ったとしても、また捨てて来いなんて云われたら...。

 このままここにいたら、夜になる前に良い人に拾われるかもしれないじゃない。

 そうよ、私になんか拾われない方がいいに決まってる。

 でもでもでも。

 もし、このまま夜になってもひとりぼっちだったら?

 
 今夜は雪が降るかも知れないって、朝の天気予報で云ってた。

 雪なんて降ったら、こんな小さくて痩せてる仔猫には耐えられないに決まってる。



 .....夜になるまで待ってみようか。

 夜になっても拾って貰えなかったら、私が連れて帰ろう。

 お母さんに反対されたなら、その時は良い飼い主を私が責任もって捜すんだ。

 
 そうよ。そうしよう。


 
 そうして、私は本屋の角からバス停を凝視しつつ、仔猫の救い主が現れるのを待った。





 
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