【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
　どうしたらいいのか分からなくなっていたあたしは、縋(すが)るように助けを求めた。

　ドアに向かい、鍵を外すとゆっくり開ける。
　今のあたしの姿を見せるのは恥ずかしいけれど、そうも言っていられない。

「リィナ⁉　どうした、その格好？」

　案の定あたしの姿に驚かれる。


　そりゃそうだよね。
　心配して来てみたら頭から生卵かぶった女が出てくるんだもん……。

　どうしたって聞かれるのは当然の流れだ。

「ふぇ……じん～」

　半泣きになって部屋に招き入れる。
　そしてキッチンスペースを見せて状況を説明した。

「卵焼き、作ろうとしてたの……」

　そう、そのために卵を三つほど割ったところまでは良かったんだ。
　ちょっと殻が入っちゃったけど、ちゃんと取ったし。

　でもその卵を溶いているとどんどんボウルから飛び出していって……とりあえず焼こうとフライパンに流し込んだけれど案の定卵が足りなくて急遽追加の卵を割って……。

　その間に卵が焼けてきて慌てて火を止めたりしていたら、今度はボウルをひっくり返しそうになって……。

　なんとかキャッチしたけれど体勢が悪かったのかボウルが弾んで跳んでしまって……。


　結果、キッチンスペースとあたし自身に生卵が飛び散ったというわけだ。
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