乳房星(たらちねぼし)〜再出発版
第16話・無人駅

【無人駅】

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時は、6月4日の朝8時10分頃であった。

ところ変わって、ことでん屋島駅のプラットホームにて…

プラットホームに志度方面から来たボギー電車が到着した。

ショルダーバッグを持って列車を降りた私は、駅構内の踏み切りを渡って、駅の外へ出た。

私は、今から6時間ほど前に和歌山から南海フェリーに乗って徳島へ逃げ込んだ。

徳島沖ノ洲マリンターミナルでフェリーを降りた私は、大型トラックの運転手《おっちゃん》に頼んでことでん志度駅まで乗せていただいた。

その後、ことでん志度駅から瓦町行きの電車に乗って屋島《ここ》にやって来た。

電車を降りた私は、屋島ケーブルカー(今は廃止されている)の駅につづく坂道を歩いて向かった。

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その後、私はケーブルカーに乗って山頂に登った。

頂上駅でケーブルカーを降りた私は、のんびりと遊歩道を散策した。

山頂駅を出発してから30分後に山頂の展望台に到着した。

私は、展望台から高松市中心部の街並みと青く澄み切った瀬戸内海を見つめた。

きれい…

ホンマにきれいだ…

私は、時を忘れて山頂から見える風景をのんびりとながめた。

(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

午後1時頃、私はケーブルカーに乗って下の駅へ向かった。

その後、再びことでん志度線の電車に乗って高松市中心部へ向かった。

終点・瓦町駅に電車が到着したのは、昼2時過ぎだった…

ショルダーバッグを持って電車を降りた私は、長い通路を歩いて本線のプラットホームへ向かった。

それから15分後に、本線の電車に乗り換えて琴平方面へ向かった。

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私が乗っている電車は、綾歌郡の国道32号線沿いの田園地帯を走行していた。

私は、なにも言わずに窓に写る田園風景をながめていた。

電車が終点・ことでん琴平駅に到着したのは午後3時過ぎであった。

ショルダーバッグを持って電車を降りた私は、国道319号線へ向かって歩いた。

その後、国道32号線を南下して高知方面へ歩いて向かった。

時は、深夜11時半頃であった。

またところ変わって、JR土讃線の讃岐財田駅にて…

無人駅の待合室にあるベンチに座っている私は、ラジオを聴いていた。

イヤホンからはNHKラジオ第一放送で放送されている『ラジオ深夜便』が流れていた。

私は、ラジオを聴きながら考え事をしていた。

昨夜《ゆうべ》、和歌山・ぶらくり丁の露地裏で目撃した事件のことについてアレコレと考えてみた。

実松《さねまつ》どんを集団で犯したヤクザ連中どもは、どこの組のモンなのか?

田嶋《たじま》と対立している組の連中…

または、田嶋《たじま》の親組織(長州組)から組の連中…

それとも…

溝端屋のダンナになんらかのうらみを抱えている連中なのか?

いや…

まてよ…

たしか、あいつらは大番頭《おおばんと》はんと小番頭《こばんと》はんと番頭《ばんと》はんがどーのこーのといよった…

浅田飴《あさだあめ》のかんかんの中に入っているものはなんだろうか?

もしかしたら…

いや…

ちと考えすぎか…

結局、その日は一睡もできなかった。

6月5日の朝6時過ぎであった。

この日の天気予報は曇りのち雨であった。

空は、灰色の雲におおわれていた。

私は、プラットホームにある水飲み場の水道を使って顔を洗った。

それから15分後であった。

私の前に、黒のスーツ姿のサングラス男がやって来た。

男は、四つ折りのデイリースポーツ(新聞)を私に渡したあとその場から立ち去った。

私は、ピンク色のフセンシがはられている紙面をひらいた。

男が指定した紙面は、お色気欄であった。

なんでやらしい欄にフセンシを貼ったんぞ…

私は、紙面の下にある広告にピンク色の蛍光ペンで記されている三行広告を発見した。

6月5日の12時までに桃陵公園《とうりょうこうえん》に来い…

この三行広告《こうこく》を出したのは溝端屋のダンナかもしれない。

6月3日の夜に実松《さねまつ》どんがあいつらから暴行を受けた原因が分かるかもしれない。

だけどまてよ…

もしかしたら、あいつらが溝端屋のダンナの名前を借りて三行広告《こうこく》を出したかもしれない…

へたすると、陥穽《わな》にはまるおそれがある…

多度津へ向かうべきか…

それとも…

行かない方がいいか…

どないしたらええねん…
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