乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

【男と女の破片(かけら)】

時は、1月12日の午後1時半頃であった。

ところ変わって、那覇市の中心部・国際通りにある沖縄本社のオフィスビルの中にある私の個室にて…

(ジー、パチパチパチパチ…)

私は、そろばんを使って帳簿のつけまちがいがないかどうかの確認作業をしていた。

午後2時半頃であった。

私は、デロンギのコーヒーメーカーでひいたドリップコーヒーをのみながら歌を聴いていた。

大型チェストの上に設置されているソニーネットジューク(大型オーディオ)のスピーカーからハードディスクにアップした歌が流れていた。

私は、前川清さんの歌で『男と女の破片(かけら)』を一曲リピートにセットして聴いていた。

ちいちゃい時から22歳くらいまでの間、極まじめな暮らしをしていたので男と女の恋と言うのがよく分からない…

私は、窓に写る那覇の中心部の風景をながめながら『人は、なんのために恋をするのか?』などと考えた。

さて、その頃であった。

またところ変わって、今治市東門町にある小学校の前にて…

(キンコーン…)

学校が終わるチャイムが鳴ったと同時に、色とりどりのランドセルを背負った児童たちが正門から通学路ヘ出た。

その中で、斐紹《あやつぐ》の息子・拡紹《ひろつぐ》が女子児童と一緒に歩いていた。

ふたりは、歩きながら楽しくおしゃべりをしていた。

その様子を見ていた男子児童たちはものすごく怒った表情でにらみつけた。

拡紹《ひろつぐ》は、学年1位の優秀な成績で女子児童たちからソンケーされていた。

それがゆえに、男子児童たちから白い目で見られていた。

拡紹《ひろつぐ》は、そんなことはお構いなしにクラスイチのあこがれのキミの女子児童と学校の行き帰りにイチャイチャしていた。

拡紹《ひろつぐ》と女子児童は、ひそかにコーカンニッキのやり取りをしていた。

それが原因で、さらに深刻な問題が家庭内で生じた。

さらに深刻な問題は、その日の夕方頃に発生した。

またところ変わって、和利《かずとし》の家族が暮らしている家のタンスが置かれている6畳の部屋にて…

部屋には、斐紹《あやつぐ》と一恵《かずえ》がいた。

斐紹《あやつぐ》は、ものすごく怒った声で一恵《かずえ》を怒鳴りつけた。

「オドレはなにを考えとんぞ!!拡紹《ひろつぐ》が学校の行き帰りに女子児童とイチャイチャしよんのを見てなんとも思わんのか!?」
「あなた、そんなにガーガーおらばないでよ〜」
「なんやオドレ!!文句あるのか!?」
「だから、拡紹《ひろつぐ》と(あこがれのキミ)ちゃんはお友達だから…」
「オドレがそのように甘やかしてばかりいたから拡紹《ひろつぐ》がつけ上がったんだ!!…学年1位の優秀な成績で女子児童からソンケーの的になっている…それがいかんのや!!」
「だけど…」
「オドレはこの頃、えらそうな態度を取るようになったな!!」
「うちのどこがえらそうなのよ!?」
「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだーーーーーーーーーまーーーーーーーれーーーーーー!!だまれといよんのが聞こえんのか!!」
「だまれはあんたでしょ!!クソアホンダラテイシュ無資格者《のうなし》!!」
「無資格者《のうなし》はオドレだ!!役立たず!!」
「なんなのよ甘ったれのチャイルドファザー!!」

ふたりは、よりし烈な声をあげながらののしりまくった。

それから数分後に、斐紹《あやつぐ》は一恵《かずえ》に対して吐き捨てる言葉で『むしゃくしゃしているからサウナヘ行って来る!!』と言うたあと家から飛び出した。

通りかかった拡紹《ひろつぐ》は、ものすごくつらい表情でその場から立ち去った。

時は、夜7時頃であった。

家の食卓には、福也《さちや》と華代《かよ》と一恵《かずえ》と拡紹《ひろつぐ》の4人がいた。

斐紹《あやつぐ》と和利《かずとし》は、食卓にいなかった。

テーブルの上には、一恵《かずえ》が作った晩ごはんが並んでいた。

華代《かよ》は、『おやっ?』と言う表情で空いている席を見てから心配げな声で福也《さちや》に言うた。

「あなた。」
「なんぞぉ〜」
「斐紹《あやつぐ》と和利《かずとし》は、どこへ行ったのかしらねぇ〜」
「さあ、ふたりとも会社で残業していると思うよ。」
「そうかしら…にしてはおかしいわねぇ〜」

一恵《かずえ》は、ものすごくいらついた表情をうかべながらごはんを食べていた。

拡紹《ひろつぐ》は、ものすごくつらい表情で『ごちそうさまでした〜』と言うて席を立ったあと食卓から出ていった。

一恵《かずえ》は、怒った声で『ごはん残ってるわよ!!』と拡紹《ひろつぐ》に言うた。

拡紹《ひろつぐ》は、ドスドスと足音を立てながら部屋から出ていった。

ブチ切れた一恵《かずえ》は、食べかけの白ごはんをバフバフバブバブと食べた。

福也《さちや》と華代《かよ》は、ものすごく心配な表情で一恵《かずえ》を見つめていた。

さて、その頃であった。

またところ変わって、今治市東門町《しないひがしもんちょう》のフジグランの中にあるミスドにて…

店舗の奥の座席に和利《かずとし》と婚約者の女性・津国里久《つくにりく》(33歳・銀行員)がいた。

テーブルの上には、ドーナツ3品とブレンドコーヒーが並んでいた。

里久《りく》は、ものすごく怒った表情で和利《かずとし》に言うた。

「和利《かずとし》!!」
「なんだよぉ〜」
「先週の金曜日、里久《りく》と一緒に映画を見るヤクソクをしていたのに、なんで来なかったのよ!?」
「なんでって…オレが帰ろうとしたら係長に『紹介したい人がいるから…』と言われて止められた…」
「和利《かずとし》は仕事と里久のどっちが大事よ!?」
「どっちも大事だよ〜」
「それじゃあ聞くけど、あんたの上司がいよる『紹介したい人』ってどなたよ!?」
「(めんどくさい声で)だから、係長がうちの会社に出向する前にいたビーマックの顧客《おとくい》さまだよ…」
「あんたの上司は、なんでクビになった会社の顧客《おとくい》さまをあんたに紹介したのよ!?」
「(ますますめんどくさい声で)だから、係長の前の上司がウキウキしていたから…」
「もういいわよ…あんたのいいわけなんか聞きたくないわ!!」

和利《かずとし》は、ものすごくいらついた声で里久《りく》に言うた。

「なんやねん一体もう…会社の人から顧客《おとくい》さまを紹介してもらうことがそんなにいかんのかよ…」
「いかんもんはいかん!!」
「どういうところがいかんのぞぉ〜」
「和利《かずとし》の上司がいた前の会社の上司はなにを考えているのか分からないからよ!!」
「たとえばどういうことぞ?」

和利《かずとし》の問いかけに対して、里久《りく》はヒステリックな声で言い返した。

「和利《かずとし》に対して、顧客《おとくい》さまのために里久《りく》と別れてくれと求めているのよ!!」
「(ものすごくめんどくさい声で)なんでそう思うねん?」

里久《りく》は、さらにヒステリックな声で和利《かずとし》に言い返した。

「里久《りく》はイヤ!!ぜーーーーーーーーーーーーたいイヤ!!…イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…イヤーーーーーーー!!」
「里久…」

和利《かずとし》は、コーヒーをひとくちのんでから里久に言うた。

「里久《りく》がそのように思うのであれば、会社やめるよ…」
「和利《かずとし》…」
「今勤めている会社は、契約社員《けいやく》で働いているんだよ…契約の期限は3月31日までや…けど…来年度の契約更新はしないことにした…」
「そう…」
「周囲の従業員さんたちも…来年度は契約更新しないと言うていた…だから決めた。」
「そうよね。」

里久《りく》は、コーヒーをひとくちのんでから和利《かずとし》に言うた。

「里久《りく》も、今勤めている会社を3月いっぱいでやめることにした。」
「里久《りく》もやめるって?」
「うん。」

里久《りく》は、ひと間隔おいてから和利《かずとし》に言うた。

「里久《りく》、近いうちに山口へ帰郷《かえ》ることにした…」
「山口へ帰郷《かえ》る?」
「うん…帰郷《かえ》ったら、そのまま実家《いえ》にいる…」
「それから先のことは?」
「そのうちにまた考える…」
「分かった…」

その後、ふたりはだまりこんだ。

和利《かずとし》と里久《りく》は、この日を最後に会わなくなった。
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