乳房星(たらちねぼし)〜再出発版

【酒は泪(なみだ)か溜息(ためいき)か】

時は、1月10日の午前10時半頃であった。

またところ変わって、今治市東門町《しないひがしもんちょう》にあるフジグランのフードコートにて…

和利《かずとし》は、予定通りにフードコート内にあるめん類店に出勤した。

和利《かずとし》がみづくろいをしていた時に、店の人が和利《かずとし》を呼び止めた。

「大保木《おおふき》さん、ちょっと待って〜」
「なんでしょうか?」
「さっき嫂《おねえ》さまのおとーさまから電話があって、今すぐに家に来てっていよったよ。」
「えっ?聞いてませんよ〜」
「今から代わりの人を呼ぶから…心配しなくてもいいから、すぐに行ってあげて…」

店の人がヘラヘラした表情で『代わりの人を呼ぶから…』と言うたので、和利《かずとし》はムッとした表情で店の人をにらみつけた。

またところ変わって、一恵《かずえ》の実家の大広間にて…

テーブルの上には、お取り寄せで注文したかっぽう重の特上弁当が並んでいた。

テーブルの周りに、一恵《かずえ》の両親と和利《かずとし》の家の家族たち3人とゆりことヨリイさんが座っていた。

和利《かずとし》は、ものすごく怒った声で一恵《かずえ》の両親を怒鳴りつけた。

「オドレはふざけとんか!?オレのバイトの予定を勝手に止めたからこらえへんけん!!」

和利《かずとし》のどなりに座っている福也《さちや》は、おたついた声で和利《かずとし》に言うた。

「和利《かずとし》、なんで嫂《ねえ》さんのご両親を怒鳴りつけるんだよ!?」
「オレのバイトの予定を勝手に止めたから怒っているんだよ!!」

華代《かよ》は、ものすごく困った声で和利《かずとし》に言うた。

「和利《かずとし》、嫂《ねえ》さんのご両親が困っているから、そんなにガーガーおらばないでよ…」

一恵《かずえ》の母は、過度にやさしい声で和利《かずとし》に言うた。

「和利《かずとし》くんごめんね…きょうは(一恵《かずえ》の)おとーさんが和利《かずとし》くんの人生がよくなる人を紹介したいからバイト休ませてくださいとお願いしたのよ。」
「(怒った声で)それはどなたですか!?」
「(華代、おたついた声で)和利《かずとし》…」
「ふざけんなよ!!オレがフジグランの飲食店でバイトしているのがそんなに気に入らないのか!?」

ブチ切れた和利《かずとし》は、にぎりこぶしをふりあげながら一恵《かずえ》の両親をイカクした。

「和利《かずとし》やめて!!」

華代《かよ》は、必死になって和利《かずとし》をなだめた。

和利《かずとし》は、よりし烈な怒りを込めて言うた。

「嫂《ねえ》さんの両親は、オレがバイトしていることに不満だと言うた!!」
「そんなことは言うてないわよ〜」
「いいや!!言うた!!」

福也《さちや》は、ひどく怒り狂っている和利《かずとし》に対しておたついた声で言うた。

「和利《かずとし》、嫂《ねえ》さんのご両親はお前がバイトしていることがいかんといよんじゃないのだよ…」

一恵《かずえ》の母は、過度にやさしい声で和利《かずとし》に言うた。

「うちらは、バイトもいいけどやっぱり正社員《しゅうしんこよう》で通せる職業に変えたほうがいいのではないかと思っているだけなのよ。」

一恵《かずえ》の父も過度にやさしい声で和利《かずとし》に言うた。

「そう思って、和利《かずとし》くんの人生が変わるきっかけを作ってくださる人を紹介するんだよ。」
「それはどなたですか!?」
「だから、私の旧友《きゅうゆう》の勤めている会社の顧客《おとくい》さまだよ。」
「(一恵の母・過度にやさしい声で)顧客《おとくい》さまは、和利《かずとし》くんを気に入っているから、お会いしたいと言うてるのよ。」
「顧客《おとくい》さまは、うんとむかしにご苦労なされた人だから、いい人だよ…」
「和利《かずとし》くんは、顧客《おとくい》さまに気に入られたのよ…もうすぐ、家にお越しになるからいい顔してね。」

一恵《かずえ》の両親がまるくおさめたので、その場はどうにかおさめることができた。

時は、午後12時半頃であった。

12時から始める予定であったが、予定の時刻になっても顧客《おとくい》さんたちが来ないので、一恵《かずえ》の両親は心配げな声で言うた。

「あなた。」
「どうした?」
「顧客《おとくい》さまは、まだ来てないわね。」
「そうだな…」
「もしかしたら、道に迷ってしまったのかしら…」
「かもしれないな…」
「あなた。」
「なんぞぉ〜」
「あなた、顧客《おとくい》さまにいいかげんな道順を教えるからこうなったのよ!!」
「なにいよんぞ!!ワシは正確に道順を伝えたぞ!!」

一恵《かずえ》の両親が言い争いをしていたので、ヨリイさんが止めた。

「あの〜、すみません。」
「はい?」
「すみませんけど、ゆりこちゃんは昼の2時からパートに入る予定なんですけど…」
「えっ?」
「(おたついた声で言う)ですから、ゆりこちゃんは昼の2時からパートに入る予定なんですよ~」

一恵《かずえ》の母は、やさしい声で言うた。

「ごめんなさい…ゆりこさんもパートがあったのね…」

ゆりこは、ものすごくつらい表情を浮かべていた。

ヨリイさんは、一恵《かずえ》の母にゆりこをパートに行かせてほしいと頼んだ。

「すみませんけど、お弁当箱の中身を別の入れ物に移し替えてください…ゆりこちゃんは時間がないのです~」
「ごめんなさい…」
「すぐにお願いします。」
「それだったら、ゆりこさんのパート先に電話しましょうか?」
「電話するって?」
「ゆりこさんのパート先の人に代わりの人をお願いできるように頼んでおきますから…」

一恵《かずえ》の母は、ヨリイさんにゆりこのパート先であるGUに電話すると言うたあと電話機ヘ行こうとした。

その時、玄関の方で怒鳴り声と泣き声が同時に響いた。

声の主は、斐紹《あやつぐ》と一恵《かずえ》と拡紹《ひろつぐ》であった。

「なんでジエータイしかないんだよ〜」
「だまれ!!わがまま言うな!!」
「ジエータイなんかいやや!!」
「アカン!!」
「ジエータイなんかいやや!!」
「だったら学校で暴れなきゃいいのよ!!」

斐紹《あやつぐ》と一恵《かずえ》の怒鳴り声を聞いた和利《かずとし》は、思い切りブチ切れた。

ブチ切れた和利《かずとし》は、食卓に入った斐紹《あやつぐ》と一恵《かずえ》のこめかみをグーで殴りつけた。

(ガツーン!!ガツーン!!)

和利《かずとし》に殴られた一恵《かずえ》は、その場に座り込んでぐすんぐすんと泣き出した。

斐紹《あやつぐ》は、ものすごい血相で怒った。

「なんや!!なんやオドレ!!」
「はぐいたらしいんだよクソアホンダラ虫ケラ!!」

(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)

和利《かずとし》は、よりし烈な怒りを込めて斐紹《あやつぐ》を殴りつけた。

「オドレ!!和利《かずとし》!!」

このあと、和利《かずとし》と斐紹《あやつぐ》がひどいどつきあいの大ゲンカを起こした。

悲しくなった拡紹《ひろつぐ》は、風呂場ヘ駆け込んだ。

つづいて、一恵《かずえ》が台所へ駆け込んだ。

その間に、斐紹《あやつぐ》と和利《かずとし》のケンカがエスカレートした。

それから10分後に悲劇が発生した。

「ご主人さま!!奥さま!!」

この時、浴室の方から家政婦さんの叫び声が聞こえた。

叫び声を聞いた一恵《かずえ》の両親が浴室ヘ行った。

「おーい!!拡紹《ひろつぐ》!!どうしたんだ!!」

拡紹《ひろつぐ》は、カミソリでリスカをしたあと血を流して倒れた。

つづいて、一恵《かずえ》も出刃包丁でリスカをしたあと血を流して倒れた。

そして…

「和利《かずとし》やめて!!」

華代《かよ》が叫び声をあげた。

華代《かよ》は和利《かずとし》に対して『やめて!!』と叫んだがそれにもかかわらずに和利《かずとし》は、硬《かた》いガラスの灰皿で斐紹《あやつぐ》の頭を殴りつけて殺した。

リスカした拡紹《ひろつぐ》と一恵《かずえ》も亡くなった。

和利《かずとし》は、殺人罪でケーサツに逮捕された。

ゆりことヨリイさんと一恵《かずえ》の両親と福也《さちや》と華代《かよ》…も、事情聴取を受けるために警察署ヘ連行された。

この日、斐紹《あやつぐ》と一恵《かずえ》と拡紹《ひろつぐ》は私立高校《コーコー》に行って、学年主任の先生と校長先生と一緒に話し合いをしていた。

拡紹《ひろつぐ》がガッコーで暴れた問題について、学年主任の先生は精神病院《ビョーイン》ヘ行くことを提示したが、斐紹《あやつぐ》が一方的に怒ったので話し合いがケツレツした。

拡紹《ひろつぐ》は、斐紹《あやつぐ》からジエータイヘ行けと強要されたことを苦に…

一恵《かずえ》は、お受験を三度失敗したことを苦に…

命を絶った…

今回の事件が原因で、双方の実家間《いえのかんけい》が気まずくなったようだ。
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