一期一会。−2−

14【大切な人】:壮太side

日下組と古立組の抗争は、呆気なく終わった。 

主犯の染野希月は、彩羽を撃ったが、それ以上の被害を生まなかった。

すっかり気力を失った奴は、大人しく警察に連行されていった。

ピーポーピーポーという音と共に、救急車がやって来て、慌ただしく彩羽を乗せて去っていく。

一緒に乗ることすらできない、危篤状態だった。

…彩羽が、死んだらどうしよう。

不安が渦巻いて、仕方なかった。


ー「お兄ちゃん、大好きだよ」


愛する妹は、その身を犠牲にして、自分以外を守り抜いた。

あの日、捨てたはずの、幼かった妹が、立派に成長して誰かを守った。

…守ろうとしていたつもりが、逆に守られていたのだ。


ー「行かないで、お兄ちゃん」  


手放した妹は、俺が気づかないうちに、優しく強く変わっていた。


暫く放心状態でいた俺のもとに、古立和がやって来て。

思い詰めた顔で、土下座してきた。

「申し訳ありませんでした…っ!

 俺のせいで、彩羽が…!」


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