一期一会。−2−

番外編【Case:翡翠高校】

[刻side]






本当、つくづく恋ってめんどくさい。





「時雨っ、おはよ!」

「おはよ、愛」

初恋の女の子は、自分以外の相手に一番の笑顔を見せる。

それが、どれほどもどかしくて切ないか。

そして、何よりその笑顔を目に映しながらも、一切動じていない奴がとてもムカつくのだ。

…絶対、表情には出てないだろうけど。

「刻、おはよ!」

川本愛、高校に入ってから仲良くなった女の子。

翡翠高校では通称“女神”と呼ばれる可愛さひいては慈悲深さを持っている。

彼女が微笑めば、どんな奴だって落とされてしまうだろうに。

隔てなく向けられる笑みに、心のなかで『可愛い!!』と連呼しながらも、「…はよ」と真顔で返す。

よく中性的な顔だとか、可愛いとか言われてはきたけれども。

問題は、感情が表に出せずコミュ力が最低レベルであること。

昔から表情を創るのが苦手で、ニコリともできない無愛想さに溜息しか出てこない。

少しでも笑えたら、愛の心を掴めるかもしれないのに。






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