一期一会。−2−
少しくらい、想いを汲み取ってやればいいのに、と思ってしまった。
 
敵だし、僕としてはいいけど。

愛の気持ちを思うと、何だか哀しくて。

だけど、それが叶わないのが何故かも知っているから複雑だった。

時雨の好きのベクトルは、愛ではない女の子に向けられているせいだ。

女をとっかえひっかえして、散々陰で愛を泣かせた時雨が、愛を選ぶことはなかった。

初恋の人の恋が実る可能性は限りなく、ゼロに近い。

まぁ、結局時雨の想い人である彩羽は時雨じゃない青火高校のトップを選んだから、時雨に対して『ざまぁ』って思ったけど。

それでも、時雨の恋心は彼女にあるみたいだから。

本当、恋愛って辛いことばっかだよね。

多くの恋は叶わないように出来てるんだろうか。

だとしたら、なんて切ない。

ボーッとしていたら、二人の会話が進んだ。

「お、可愛い。

 似合ってんじゃん」

「…っ!」

あーぁ。

どうせ顎掴んで顔近づけてんだろ。

そして、ゆるく笑ってる。

そっちを見る気はない。

けど、そんな想像が容易くできた。




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