貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
さっと風が吹く。

その方角を見れば,とても大きなお庭があった。

雑草1つない,綺麗なお庭。

本当に綺麗なだけで何もないけど,端っこに1本。

まだ咲いていない桜の木がある。

根本の辺りが少し盛り上がって,長い木の板が刺されていた。

私は驚いて,置いてあった靴の中から下駄を履いて駆け寄る。

どの服装の人にも対応できるように置いてあった他の靴は,少しバラバラにしてしまったけれど。

ごめんなさい。

ペコリと頭を下げて,私は前をむいた。

このお屋敷の構造は全て覚えてる。

何せ1年も過ごしたお屋敷だ。

こんなに遠くまで歩いてきたなんて思わなかった。

だけど,来れて良かった。

そう,心から思う。

これは,蘭華の作った,蘭華の両親のお墓。

ざっとしゃがんで,手を合わした。



『蘭華のお父様,お母様。お久しぶりです。私は,これからお二人の大切な蘭華を誘惑します。ごめんなさい……私は蘭華を泣かせてしまった。その後,蘭華は命を絶ったかもしれない』



そのくらい,悲痛な表情だった。

もう,あの後のことなんて知れないけど。



『り,りあ…ぁ……っ』



仮にも島1番の組織のトップが,あんな風に泣くなんて。

他の皆もすごく驚いていたのを覚えている。

だから,蘭華の涙を拾う為に,私は戻ってきた。

もう誰も後悔しないように。

私の選択を咎めることが出来るのは,きっとこのお二人だけだ。

私は深く,祈りを捧げた。



『お願いです。蘭華に,幸せな未来を』



あんなのは,あなた方も望んでないでしょう。

お二人の,復讐なんて。



「何してるの,お嬢さん」
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