貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!


「リリー,俺さ……」

「凛々彩,カイ。おはよう」



涼やかな声に,ぱっと振り向く。

こちらもまた,いつもはいないか寝ているの2択なのに……



「蘭華!」



手になにやら持って,庭に出てきていた。



「ごめんカイ。君までいるとは思わなかったから」

「俺はいいよ」

「中にあるから,朝食の時にでも良かったらどうぞ」



蘭華の視線が私を捉え,柔らかに笑んだ。



「デザートを作ったんだ。凛々彩,こう言うの好きでしょう? まだアンナには負けるけど」



その鮮やかな色は。



「タルト! 小さなタルトを作ったのね。でもちょっと待って,蘭華。この持ってるのだけ干しちゃいた……」

「こうすれば,平気でしょ?」



新鮮に色づくフルーツのタルトを,指で摘まんだ蘭華が私に向ける。

上目で確認しながら口を開くと,んむ,と押し込まれた。

じゅわりとブドウの実が潰れ,色々な果実の味と共に喉へ流れる。
< 144 / 181 >

この作品をシェア

pagetop