君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
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コンコン。
家に帰り、制服のまま伊織の自室を訪ねる。
控えめにノックをすると、すぐに「はい」と落ち着いた声が聞こえた。
そっと開けると、伊織はパソコンを開いて仕事をしているようだった。
「ごめん、仕事中だった?」
引き返そうとすると、「大丈夫。もう終わるから」と引き留められる。
「どうした?」
穏やかに微笑みながら立ち上がる。
「今日は……ごめんね」
「なにが?」
「ほら、実験の時の……」
そう呟くと、目の前まで来た伊織がそっと私の手を取った。
「怪我はなさそうだね」
「うん。あの時、ちょっと動揺しちゃって……。キツイ言い方しちゃったから……」
ボソボソと言い訳をすると、優しく「うん」と頷かれた。
「気にしてないよ。真琴が怪我していなくて良かった」
そう言うと、ポンポンと優しく頭を撫でてくれた。
「伊織は本当に優しいね」
気持ちが通じあってから、伊織は目に見えて優しくなった。
たぶん、もともとの優しい部分を私にも出してくれているのだろう。
「伊織、抱き締めてもらってもいいかな?」
恥ずかしさから小さい声で呟くと、伊織が目を丸くした。
「珍しい」
そう言いながらも、ギュッと抱き締めてくれる。
伊織の匂いと暖かさに心の底からホッとした。
大丈夫だよね。
伊織は私の側に居てくれる。
そう、自分に言い聞かせた。