干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「誰にも教えることはないって、思ってたんですけどね……」

 そう言いながら、そっと顔を持ち上げ美琴を見つめる副社長の瞳は、熱を帯びている。


 ――あぁ、やっぱり、吸い込まれそうだ……。


 美琴はその瞳から目が離せなくなる。

 すると突然強い風が吹き、美琴はハッとして顔を真っ赤にしながらうつむいた。


「どうして、教えてくれたんですか?」

「どうしてかな……」

 副社長は夜景に目を移し、しばらくじっと黙っていた。


「もしかしたら……友野さんには見て欲しかったのかも知れません」

「え?」

「ただの野田俊介という人間を」

 少しだけ、照れたようにほほ笑む副社長の後ろで、夜景と星空が重なって見える。


「私も……」

 美琴は高鳴る鼓動を抑えるように、両手を胸の前でぎゅっと握った。

 そしてゆっくりと副社長に向き直り、頬を赤く染めた顔を上げる。


「私も、もっと知りたいです。副社長としてではなく……あなた自身を」


 副社長は、一瞬目を丸く開き柵から手を離すと、優しくほほ笑みながら頷いた。
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