干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

次の仕事

「はぁ……」

 デスクに向かう美琴の後ろ姿から、今日何度目かのため息が聞こえた。


「と、友野さん。大丈夫ですかね」

 少し離れたところで様子を見守っていた滝山が、部長と東にこそっと声をかける。

「ため息の数が多すぎだな」

「まぁ、それはあっちも同じだけど……」

 三人はそっと窓側の副社長のデスクを振り返る。

 副社長はぼんやりとパソコンの画面を見ながらも、心は違う事を考えている様子だ。


 自分の事を噂されているとも知らずに、美琴はデスクで頬杖をつく。


 あのイベント最終日の出来事の後、美琴を連れてブースに戻った副社長は雅也のことに関して一言も発しなかった。

 二人が何を話していたのか、美琴には全く予想がつかない。

 そして美琴からも、雅也に関して何か話すことは躊躇(ためら)われた。


『もし俺が、美琴ちゃんの憧れているSNSの人だって言ったらどうする? 俺のこと好きになってくれる?』


 あの日以降、雅也の言葉は何度も美琴の頭の中で繰り返されていた。
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