干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

すれ違い

 健太は朝一番に、俊介のマンションまで車で迎えに来ていた。

 普段だったら俊介は、エントランスまで出て来ている時間だったが、今日はその姿が見えない。


 ――昨日は結局、あの後一言も話さないままだったもんな……。


 健太は運転手を待たせたまま、マンションのコンシェルジュに頼み俊介の部屋のインターホンを鳴らしてもらった。

 しばらくエントランスのソファに腰をかけて待つ。


 ――それにしても、何で美琴ちゃんは雅也に会ってたんだろ……。


 健太は頭の中であれこれ考えを巡らせる。

 会社の目と鼻の先、誰が見てるかわからない場所、そして美琴の性格を考えればやましい感情はなさそうに思えた。


 ――じゃないとすると……。まさか、雅也のこと本気で……。


 しばらく待つとエントランスの向こうの扉が開き、明らかに不機嫌そうな俊介が姿を現した。

「おはよう……って。俊介、こえー」

 健太はわざと震え上がる身振りをする。

 俊介は横目でその姿を一瞥すると、ふんっとそっぽを向いた。

「子供かよ……」

「うるさい!」

 健太は大げさにため息をついてみせながら、横目で俊介の様子を伺った。
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