干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 副社長はしばらくそのままでいたが、美琴の腕を優しく持つと屋上の(ふち)に座らせた。

 そして自分もその隣に腰かける。


「取り乱してごめんなさい」

 美琴はうつむいて、小さく言った。

「僕も、さっきの言い方は、大人げなかったですよね」

 副社長も膝に肘をつき、下を向いている。


「副社長は悪くないんです。私が軽率でした。水上さんに甘えるべきではなかったんです……」

「何があなたを、あそこまで追い詰めたんですか?」

「え……?」

「昨日、友野さんの様子は明らかにおかしかった。仕事も手につかないほど」

 美琴は、はっとして顔を上げる。

 副社長には、自分の様子を見抜かれていたのか。


「雅也には、友野さんが連絡したんですか?」

「ち、違います! 水上さんは多分、見積りのことが気になって連絡をくれたんです。でも私の様子が変なのに気がついて、車で駆けつけてくれて……」

 そこまで聞いた所で、副社長ははぁとため息をつく。


「雅也らしいな……。あいつは人の心の様子に敏感だから」

 話を聞いて美琴は、あぁそうなんだと納得していた。


 ――だから、私のあの一言だけで、駆けつけてくれたんだ。
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