干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

止まらない気持ち

 美琴は、一緒に社員食堂に行っていいものか躊躇(ためら)っていた。

 食堂にいけば、この前の朔人との会話を聞いていた社員が、いるかも知れない。


 ――副社長は噂が立っても、迷惑じゃないとは言ってたけど……。やっぱり気になる。


 三人が出て行き扉が閉まった後も、美琴はしばらく立ち上がらずにいた。


「どうしました?」

 美琴の様子に気がついた副社長が、顔を覗き込む。

「あ、あの。私は別で行こうかな……なんて」

 美琴は、副社長の顔をまともに見られずに、下を向きながら小さな声を出した。

 すると副社長から小さなため息がもれる。


「最初から、このプロジェクトは泥船なんでしょ? 噂なんて、勝手にさせておけば良いんです。友野さんは変に考え込まずに、突っ走ってる方が似合いますよ」

 副社長はくすりと笑った後、美琴の両腕を持ちソファの前に立たせた。

「それって、褒められてます? またけなされてます?」

 美琴はころころ笑いながら副社長を見上げ、目の前の吸い込まれそうな瞳にドキッとする。
< 214 / 435 >

この作品をシェア

pagetop