干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 東たちはすでに食堂に入っているようだ。

 食堂へと続く廊下を歩きながら、美琴はそっと副社長を見上げる。

 その視線に気がついたのか、副社長が頬を緩めながら顔を向けた。


「この仕事が終わったら、友野さんに伝えたいことがあります」

 美琴は、目を丸くしてまばたきを繰り返した。

「あ、あの……それって」

 美琴が言いかけたその時、前から歩いてきた人影が二人の前でぴたりと立ち止まる。

 美琴は視線の端に映ったその姿に、背筋がゾクッとするのを感じた。


「あれ? 兄さんと、噂の彼女さんじゃないですか!」

 美琴は目の前で、楽しそうにほほ笑んでいる朔人をキッと睨みつける。

「そんな、怖い顔しないで下さいよ」

 相変わらず朔人は、愛想の良い顔でにこにことほほ笑んでいた。

「そうそう! 兄さん、ちょっと友野さんと話をしても良いですか?」

「その必要はない」

 突然放たれた副社長の冷たい声に、さすがの朔人も表情から笑顔を消した。
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