干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「美琴ちゃん、すごい落ち着いてたじゃない! 俺なんか何もしないのに緊張しまくりだったよ」

 東が笑いながら美琴の肩をぽんぽんと叩いた。

「いや、本当に良かったよ。干物も滝山もよく頑張ったな……」

 部長はすでに感極まったのか、目頭を押さえている。


「部長! まだ終わってませんから!」

 美琴は笑いながらふと、さっきから気になっている雅也の様子を振り返る。

 雅也は席に座ったまま腕を組み、じっと目を閉じていた。


 ――やっぱり、いつもと様子が違う……。


 普段は自信たっぷりで愛想のいい雅也だが、今は近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

 そのせいなのか、トータルの社員も静かに席に座ったままだ。


「雅也の事、気になるの?」

 東に声をかけられ美琴はどきっとして顔を戻す。

「そういうわけじゃ……。ただ、さっきから笑顔がないなって思って」

「あいつはいつも愛想よく笑って、本心見せないからね」

「え……?」


「それだけ本気だという事でしょう。この仕事を取るために」

 首を傾げる美琴の隣で、副社長が雅也を見つめながら静かに声を出した。
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