干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 喜ぶ美琴達の横で、トータルの社員達は明らかに、がっくりと首をうなだれていた。

 雅也も腕を組んだまま、静かに目を閉じる。


 美琴達の歓喜が収まったのを見計らって、責任者の男性が言葉を続けた。

「今回の壁面装飾は、グリーンデザインさんに決まりましたが、やはりトータルグリーンさんの案も素晴らしいものでした。ただこちらは映画を観た後の人にアピールするのに向いている。そこで……」

 男性の言葉に会場は急に静かになり、みんなの視線が一気に集中する。


「急遽なのですが、トータルグリーンさんの壁面装飾は試写会の会場で使用させていただくことにします」

 予想もしなかった男性の言葉に、会場内は一瞬静けさに包まれる。

 でも次の瞬間、トータルの席からは悲鳴にも似た声が上がった。


「雅也さん、良かった……。あなたが必死に取り組んでいたのを、僕達はみんな見てましたよ」

 プレゼンの発表をしていた男性が雅也の手を握る。

「斎藤……」

 雅也もまだ驚きを隠せない様子だったが、しばらして斎藤の手をぐっと握り返した。
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