干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「でも結局そっちだって、ちゃっかり仕事取ってんじゃん。さすがだよな」

 東の(とげ)のある言葉に、明らかに雅也の表情が曇った。

「健太。やめろ」

 副社長が手を伸ばして東を制する。

 それに反発するかの様に、東はぐっと身を乗り出した。


「前から雅也に言いたかったんだ。トータルは汚い手を使って仕事を取ってる。雅也だってわかってるんだろ? 俺たちの事も平気な顔して切り捨てたもんな。あの時……俺と俊介がどれだけ傷ついたか知ってるのかよ?!」

 東はいつになく感情的になって言い捨てる。

 雅也は何も言わずに、東の話をじっと聞いていた。


「健太。今その話は関係ないだろ」

「関係ない? 俊介は甘いんだよ。そんなだから見積りも盗み出されたりするんだ!」

 東はだんだんヒートアップしてつい声が大きくなる。

「あ、東さん。ここじゃまずいですよ」

 滝山がおろおろと周りを気にした。


 しばらくして雅也が寂しそうに東の顔を見つめた。

「それが、俺の意思じゃなかったとしても……?」

「は?」

「いや、何でもない。そうだね。俺は汚い手を使う奴だね……。ごめん。今日はここで失礼するよ」

 そう言い残すと雅也は一人で廊下を歩いていった。
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