干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「今回のコウモリランは大きいですね」

 副社長は美琴の向かいに座り、缶コーヒーを差し出す。

 美琴は軽く頭を下げてから、そっとそれを受け取った。


「壁面装飾なので、特に大きめなのをお願いしたんです。部長が見つけてくれた卸問屋(おろしどんや)さんが凄く品揃え豊富で。あ! ブナの木も見ますか?」

 美琴は興奮した様子で立ち上がると、副社長を奥の部屋に手招きした。


 そこには届いたばかりの、3mはあろうかという高さのブナの木がそびえ立っていた。

 すでに落葉の時期は終え、紅葉した葉は数枚程度が残るのみだ。


「冬だし、当然緑が生い茂る森の雄大な様相のブナの木とは違いますけど、それでもやっぱりこの幹の感じとか神秘的で素敵ですよね」

「そうですね。植物の生命力は僕たちに力をくれる」


「あ……」

 美琴が突然あんぐりと口を開けて固まったのを見て、副社長が不思議そうに首を傾げた。

「副社長……今思いついたんですけど。この枝に雪の装飾を入れたらどうでしょう? デザイン画には書いてないんですが」

「素敵だと思いますよ。先方に問い合わせてみたらどうですか?」

「はい!」

 美琴はバタバタと電話に駆け寄り、すぐさま受話器を取り上げる。


 副社長は椅子に腰かけながら、そんな美琴の様子を優しく見守っていた。
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