干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 するとしばらくして、俊介からくくっと笑う声が漏れ聞こえる。

「嘘です。ちょっと意地悪したかっただけ」

 俊介はほほ笑みながらそう言い、顔を上げて星空を見上げた。

「もう。副社長ったら」

 美琴は俊介を軽く手で小突くと、一緒に顔を上げる。

 春のうるんだ夜空は、小さな星がぼんやりと柔らかい光を瞬かせている。


「連れて行きたい場所があるんです。毎年夏前に行くんですが、今年はちょっと忙しくなりそうだからな……」

「展示会がありますもんね。どんな所なんですか?」

 美琴は、俊介の整った顔を下から見上げた。


 最近はふとした時に、美琴にだけ見せる表情がある。

 そんな気を許した普段着の顔を見つける度に、心の底からこの人を愛しいと思うのだ。


「僕にとって大切な場所です。展示会の仕事が終わったら、一緒に行きましょう」

「はい。楽しみにします。約束ですよ。……俊介さん……」

 美琴は恥ずかしそうに、そう言いながら小指を目の前に出した。


 俊介は目を丸くして、美琴の顔を覗き込む。

「初めて名前で呼んでくれた……」

 俊介はそう言うと美琴の小指に自分の小指をそっと絡める。

 そして照れ笑いをしながら、肩をすくめる美琴を抱きよせて、そっと優しくキスをした。
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