干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 胡桃はメガネの縁を、くいっと上げながら一同を見渡した。


 ――私は、二案目が良いな。


 美琴がそう思いながら顔を上げると、すぐに俊介と目が合う。

 きっと俊介も二案目が気に入ったのだろう、指を指して美琴に小さく合図している。


 俊介がみんなの顔を見渡した。

「僕個人としては二案目で行きたいのですが、皆さんはどうですか?」

 みんなが大きく頷き「では二案目で……」と俊介が声を出した時、健太のデスクの内線電話が鳴り響いた。


 バタバタとデスクに向かい、かかって来た番号を見た瞬間、健太の表情が曇る。

「はい……。はい……。すぐに伺います」

 健太はいつになく、緊張した声を出している。


「俊介。社長がお呼びだ。部長と俺も一緒に来いって……」

 受話器を置いた健太は、俊介と部長を見ながら表情を硬くした。

「こんな時期に何の用だ?」

 部長が俊介に顔を向けながら、しきりに首を傾げている。

「さぁ。行ってみないとわかりませんね……」

 俊介はおもむろに立ちあがると、美琴に軽く目配せをした。


 静かに部屋を出て行く三人の後ろ姿を見送りながら、美琴は不安な気持ちを押し込める様にぎゅっと両手を握った。
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