干物のミカタ ～副社長！ 今日から私はあなたの味方です！～

「友野さん達には、申し訳ないと思っています。巻き込んだ形になりますからね」

　副社長の落ち着いた声は、絨毯(じゅうたん)がひかれた静かな廊下に響いていた。


「……わかりました」


　美琴は副社長の背中を見つめて、ぴたりと足を止める。


「え？」

　副社長は、不思議そうな顔で振り返った。


「わかりました。私は胸を張って、仕事がしたいんです。そうじゃなきゃ、顔向けできない……」

「はぁ」

「副社長が言ってた『味方が一人もいなくなっても、やり遂げる』って言葉、信じます。私だって巻き込まれたからには、本気で戦いますよ！」

　美琴はにんまりすると、副社長の横を通り過ぎ、さっと副社長室の扉に手をかけた。


「私は今日から、あなたの味方です！」


　美琴はガチャリと扉を開け、笑顔で副社長に手を差し伸べる。


　その手を見つめた副社長の黒い瞳は、ほんの少しだけ、揺れたような気がしていた。