干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

俊介の決意

「お待たせしました」

 ノックと共に社長室の扉が開き、笑顔の由紀乃が顔を覗かせた。

 由紀乃は俊介の顔を見ると、ぱっとはにかんだ様子を見せる。

「由紀乃さん。わざわざすみませんな。どうぞこちらへ」

 社長は満面の笑みで由紀乃を迎え入れ、ソファを進めた。

 俊介は立ち尽くしたままその様子を見ている。

「由紀乃さん。僕は……」

 俊介が何か言いかけようとした時、それを遮るように由紀乃が口を開く。


「そういえばさっき、友野さんにお会いしましたわ」

「え……?」

「少しだけお話ししました」

「何を?! 彼女と何を話したのですか?!」

 俊介は取り乱すように由紀乃に詰め寄る。

「苦労して植物の手配をされたと伺ったので、それを少し」

 由紀乃はにっこりと口元を引き上げた。

「そうですか……」

 俊介は由紀乃から離れると下を向く。


「そういえば」

 由紀乃が頬に手を当てながら小首を傾げて続けた。

「もう、俊介さんにはお会いにならないっておっしゃってましたよ」

「え……?」

「やっとご自身の立場を理解されたのかしら?」

 可愛いらしく笑顔で話す由紀乃に、社長も「ほお」と声を出す。

 俊介は笑い合う二人を横目に、ばっと社長室を飛び出していた。

「俊介さん!」

「俊介! 待ちなさい」

 後ろで呼び止める声が聞こえたが、俊介は決して足を止めなかった。
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