干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「ふ、副社長は……?」

 滝山が小さく美琴に聞いた。

 美琴はふっと寂しそうに笑うと、首を横に振る。

「みんな気にしてくれてたんだね。ごめん……。ありがとう」


 下を向く美琴に部長がそっと近づき、頭をぽんぽんと優しく撫でた。

「みんなで打ち上げ行きましょう!」

 胡桃が横からひょこっと顔を覗かせ、美琴はにっこりとほほ笑んで頷く。


 展示会の終了のアナウンスが流れ、出口に向かって歩きだした時、美琴はもう一度あのメインスペースを振り返った。

「ごめん。写真だけ撮って追いかけるから、先に行ってて」

 美琴は滝山にそう告げると、もう一度会場の真ん中に駆けだした。


 ――私の副社長への想いは叶わなかった。それでも、私はあのSNSに胸を張ってお礼が言いたい。


 美琴はスマートフォンを取り出すと、渓谷の装飾を写真に撮る。

 そして画面をタップするとSNSを開いた。


 一年前、美琴が渓谷で滑落した日に更新されたあの滝つぼの写真。

 その記事のコメント欄を開く。

 そしてさっき撮影した写真を添付し、震える手で送信マークをタップした。


 “あなたが味方でいてくれたから、私は前に進めました。あの日、助けてくれてありがとう”


 そうメッセージを添えて。
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