干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「俊介くん。電話では『由紀乃との結婚話を断りたい』と言っていたそうだが、御父上はもちろん納得されているんだろうな?」

 鷺沼は静かに目を開くと、俊介を睨みつける。

「はい。父を説得した上で申し出させて頂きました。本来であれば今日ここに父も同行すべきでしょうが、私の一存でこちらに参っております」

「ほお。その判断がどういう事を意味するか、十分わかってのことだろうな……」

 鷺沼はゆっくりと顎をさすりながら、ドスのきいた声を出した。

「はい。心得ています」

 鷺沼の脅しに俊介は淡々と声を出す。


「君には失望したよ。もう少し優秀だと思っていたのだがね……」

 鷺沼は、後ろの部屋に控えている由紀乃にチラッと目をやる。

「大事な一人娘の心を傷つけられた恨みは大きいぞ。……まぁ、よい。余程の覚悟なのだろう。せいぜいこの業界で生きていけるようにあくせく働くんだな」

 鷺沼は吐き捨てるように言い放つ。

「ご忠告は心にとめおきます。……それと」

 俊介は一旦頭を下げてから、鋭い目つきで鷺沼を見上げた。


「本日は一つ、お知らせしておきたい事がございまして」
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