干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

明かされた苦悩

 それから程なくして、いずれ俊介が社長に就任するという話は社内を駆け巡った。

「まさか干物が、社長夫人になる日が来るとはなぁ」

 部長が感慨深げに声を出す。

「まだ夫人じゃないですから!」

 美琴はキーボードを打つ手を止め、顔を上げた。


「もう両家で挨拶ってしたんですか?」

 胡桃が興味津々でパソコンの間から顔を覗かせる。

「まだなの。でもうちの両親は、話聞いただけで心臓止まりそうになってたんだよね……」

「そりゃそうでしょ! 次期社長っすよ! 玉の輿だなぁ」

 瑠偉の声にフロアが明るい笑い声に包まれる。


「で、でも。本当に友野さんいい顔してる。仕事も展示会以降さらに順調だしね」

「うん。滝山くんも本当に色々ありがとうね」

 美琴が滝山に笑いかけた時、フロアの扉が静かに開き俊介が顔を覗かせた。


「お! 旦那様がお迎えですよ」

 瑠偉の茶化す声に、「もう!」と口を尖らせながら美琴は手早く荷物をまとめる。


「部長。今日は半休取ってるのでこれで失礼します」

「おう。気をつけてな」

「はーい」

 美琴と俊介はみんなに手を振ると、仲良くフロアを後にした。
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