干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 美琴が首を傾げていると、隣で東のため息が聞こえてきた。


「わぁ。こんな所で何してるんですか? 兄さん!」

 男性は副社長に親し気に話しかけた。


 ――兄さん?!


「お前こそ珍しいな……朔人(さくと)

 そう声を出す副社長の表情は硬い。


 “朔人”と副社長に呼ばれた男性は、変わらずに人懐っこい顔でほほ笑んでいる。


「あれが噂の弟くん……」

 東がこそっと、美琴と滝山に耳打ちした。


 美琴は後ろから、そっと朔人の姿を伺う。


 背は副社長よりも低く、猫っ毛の柔らかそうな茶色い髪は、ふわふわとカールしている。

 くりくりとした目は、笑うと目じりが下がって弓なりになった。

 いかにもお人よしそうな、可愛らしい男の子という印象だ。
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