干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「すみませーん」

 店の方からお客の呼ぶ声がする。

「はーい! ただいまー」

 おばちゃんは、よいしょと腰をさすりながら、部屋の入り口の障子を開けサンダルを履いた。


「あんたはもう少し休んどきな」

 そう言い残すと、おばちゃんはパタパタと店の方に出て行った。


「すごい迷惑かけちゃった……」

 美琴はおばちゃんの後ろ姿を見送りながら、さっきの話を頭の中で繰り返す。


「あの時、誰かが通りかかってたんだ……って、もしかして!」


 美琴は慌ててリュックサックから、スマートフォンを取り出した。

 慣れた手つきでSNSを開き、画面をスクロールさせる。


「……あっ!」


 美琴の手はある画面でぴたりと止まった。

 そこに写っていたのは、緑豊かな渓谷を流れる滝と、コバルトブルーの滝つぼの写真。

 まさにこの遊歩道の先、美琴が落ちかけた場所のすぐ近くの写真だった。
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