干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「気を使わなくていいのに……。今、お茶入れてあげるから、外の椅子に腰かけて待ってな」

 おばちゃんが指さした方には、野点傘(のだてがさ)毛氈(もうせん)を敷いた縁台があった。


 ――昔のお団子屋さんみたい。


 使い込まれた茶色で大きな日よけの(じゃ)目傘(めがさ)に、フェルト素材の緑色の敷物が敷かれた幅広の木製の台。

 傘の下に腰かけると、日差しが和らぎほっとした。


 心地よい温かさと澄み切った空気。

 耳を澄ますと野鳥のさえずりと共に、風に揺れざわざわと葉が重なり合う音だけが聞こえる。


 美琴は鞄から、スマートフォンを取り出してSNSを開いた。


 ――やっぱり、あれ以来更新されてないなぁ。


 画面に映し出されたのは、あの日のコバルトブルーの滝つぼの写真だった。


「ごめんねぇ。こんな店先で」

 店の中から声が聞こえ、おばちゃんがお盆を持って顔を出した。

「どうぞ」

 縁台に置かれたのは、お茶とまん丸な形をしたよもぎ団子だった。
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