干物のミカタ ～副社長！ 今日から私はあなたの味方です！～

「雅也くんも知ってるだろ？　この前、遊歩道で女の子が滑落しかけたって話……」

「あぁ。俺が聞いた時には、もう騒ぎはおさまってましたけど」

「それ！　この子なんだよ」

　福さんが笑いながら、美琴を指さした。


「本当に？！」

　雅也は驚いて、美琴の顔を覗き込む。


「あの日、ここで話聞いてびっくりしたんだよ」

「え……ここに……いたんですか？」

「そう！　今日も会うなんて、縁があるのかな。俺たち」

　雅也は組んだ足に頬杖をつき、くすくすと笑いながら美琴を見ていた。


「あの……」

　美琴が話しかけようとした時、店の中から呼ぶ声が聞こえ、福さんがぱたぱたと中に入って行く。

　美琴は、話しかけるタイミングを失って、一旦下を向いた。


「それにしても、滑落する人が出ないようにって、時々ボランティアに来て遊歩道の整備を手伝ってるんだけど……。まさか目の前のコが滑落者だったとはね」

　雅也はまた楽しそうに笑い、美琴はその笑顔をじっと見つめた。