腕の中で、愛でる
「━━━━はい!到着!」

「「ありがとう!」」
「ん。行っておいで!
━━━━あ、御影!」

「ん?」

「俺の大事な娘“くれぐれも”よろしくな!」

「うん!もちろん!」
澄義の鋭い視線に一瞬目つきを鋭くし、満面の笑みで頷いた御影だった。


手を繋ぎ、ゆっくり校舎に向かう。
そして、1年S組に入る。

御影と華澄の通う高校は、小学校からの一貫校だ。
なので、クラスメートは知り合いが多い。

「おはよう!」
「おはよー!みかかす!」
「みかかすだ!おはよー!」
二人が交際していることは、ほとんどの生徒が知っている。

なので生徒達は、御影と華澄のことを“みかかす”と呼ぶ。

「おはよ、御影!華澄!」
もう一人の幼馴染み・沖島(おきしま) 真理(しんり)が、声をかけてきた。

「リンリンおはよ!」
「しぃくん、おはよう!」

「相変わらず、仲良いな!」
「うん!良すぎて困るくらい!」
「………」


「おはよー」
教師が入ってきて、みんな席に着く。

「………」
「可愛いなぁ…カスミン…」

「………」
「カスミンの可愛さは、犯罪級だね!」

「………」
「あ!あくびする?
お…あくび出そ……うで、出ないのー」

「………」
「わ…何今の仕草!
耳に髪の毛かける仕草、なんか色っぽい…////」

「……みぃくん!!」
「わ!なぁに?」

「ま、え!向いて!!」
「えー!やだぁー」

御影と華澄は、前と後ろの席順だ。
御影は身体ごと後ろを向いて、華澄の机に両手で頬杖をついてひたすら華澄を見つめていたのだ。

「先生の話、聞かなきゃ!」
「聞いてるよ?一応」

「え?じゃあ、何て言った?先生」

「今日の数学は、自習です。
明日から、体育が始まるから体操着忘れるなって」

(合ってる……
ちゃんと聞いてたんだ…!)

先生の話が終わり、教室を出ていく。
「あーー!!」
「な、な、何!?」
突然、声を張り上げた御影。
華澄は、ビクッと身体を震わせて御影を少し睨んだ。
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