泡沫
「うーん……」
「……イマイチですか?」
「イマイチってことはないんですよ。なんていうか、早乙女先生っぽくないストーリーというか」
「私っぽくない……ですか?」
「先生が新しいものを取り入れたいって気持ちはすごくわかるんですけどね。いきなりSF恋愛漫画って……」
「やっぱり……おかしいですかね」
「もう一度プロットからお願いできますか? このネームだと来月のコンペは難しいかもしれません」
「……はい」
早乙女先生は、小さななで肩をさらに落とし立ち上がると、うつむきドアへ向かった。
「早乙女先生! 早乙女先生の作品の良いところは、キャラクターへの共感がすごくできるストーリーで、手にとるような身近に感じる切ない恋愛物語だと思うんですよ。そんな作品を読者は待っていると思うんです」
「加山さん……ありがとうございます」
今にも泣きそうな大きな瞳を潤ませ、笑顔を見せた。
「先生、頑張りましょう!」
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