湖面に写る月の環

21

(……特権ってやつだよな)
確かに、屈託のない笑顔はどうにも憎めない。何度目になるかもわからないため息を吐き、僕は彼等に向き合った。……乗り掛かった舟だし、このまま帰っても気になるだけだ。それなら一緒に過ごしてしまった方が早い。
「時間もないし、早く済ませるぞ」
「あたぼーよ!」
探偵少年の意気揚々とした声を開始の合図として、僕たちは顔を付き合わせた。

「まず、探偵の彼を呼んだのは私からなんだ」
「岡名さんから?」
「そう」
急に呼んでしまってすまないね、と声を掛けてくる彼に、探偵少年は首を横に振る。どうやら彼等は依頼を受けると決まった際に連絡先を交換していたらしい。そして、今朝岡名から連絡があったのだとか。
(なるほど。それで放課後になって早々に僕のところに飛び込んできたのか)
探偵少年の行動原理がわかったところで、話は依頼内容の話になった。彼等曰く、依頼内容は『サークルで起きた奇妙な出来事の犯人を捕まえて欲しい』という事。既に聞いていた話と大差ないその依頼内容に、僕はただ黙って聞いている事しか出来なかった。新しい情報と言えば、彼等のサークルに属する人物たちの名前と性別くらいだ。
――超常現象執筆サークル『みやこ』。そのサークルメンバーは合計で四人いるらしい。
「まずはメンバーのリーダー、京(みやこ)朝(あさ)紀(き)。ペンネーム、『にし京』」
大学三年生の、女子生徒。眉目秀麗、成績優秀を地でいく人らしく、大学でも人気者であるらしい。更に世話焼きで、誰にでも分け隔てなく接する優しい人間なのだとか。リーダとしてふさわしい彼女は、どうやらサークル内では編集者のような立ち位置でいるらしい。
「へえ。成績もいいのに活動もしっかりしてるって凄い人だね」
「そうなんだ。彼女ほど、努力家な人を私は見たことがないよ」
岡名が微笑ましそうに笑みを浮かべる。……そういえば彼はそのサークルに入っているわけではないようだし、接点はどこにあるのか。僕は岡名に視線を向けると声を掛けた。
「岡名さんはどうして彼女たちと知り合いなんですか?」
「ああそれは――」
「四人の中に婚約者がいるんだと」
「こ、婚約者⁉」
予想の斜め上を行く返答に、僕は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。どうして岡名ではなく探偵少年が答えているのか気になるが、それよりも驚きの方が大きい。
(婚約者、って……!)
まるでドラマの中のような出来事に、思わず顔が赤くなってしまう。まだまだ若いのに、もう運命の相手が見つかったのかと思うと羨望のような気持ちが込み上げてくる。
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