ビター・マリッジ

「どうして隠すんだ? タイミング的に良いんだろ」

「でも……」

幸人さんの前に露わになった自分の太腿の白さが、明るい場所でやけに生々しく見えて恥ずかしい。

唇を引き結ぶと、外側から滑り込んでくる幸人さんの手を拒むように内腿を閉じる。

強張ってうつむく私のことを、幸人さんは無表情でジッと見ていた。

これからしようとしていることに、緊張と恥じらいで火照りそうな私と違って、幸人さんには全く熱が感じられない。私を見つめる瞳も、触れてくる手も、温度がなく冷たいままだ。

幸人さんにとって、これは私との結婚生活の延長線上にある義務みたいなものだ。

それはわかっているはずなのに、月に一度だけの行為をするたびに、哀しくて心が折れそうになる。

項垂れて黙り込んでいると、幸人さんが気怠げにため息を漏らした。

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