ビター・マリッジ

肩をつかむ幸人さんの手を退けようとすると、私を見つめる彼の口端が僅かに動く。

そのことに驚いて動きを止めた私を、幸人さんが勢いよくベッドに押し倒した。


「ゆき――」

幸人さんが私の手首をシーツに押し付けながら、唇を塞ぐ直前、彼がほんの少しだけ口角を引き上げて笑ったように見えた。

だけど、それが現実だったのか、幻だったのか。私には確かめる術がない。

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