ビター・マリッジ

日本庭園を並んで歩く幸人さんと姉は、誰がどう見ても美男美女のカップルで。身内の贔屓目を抜いてもお似合いだった。

少し羨ましく思いながら姉と幸人さんの姿をぼんやりと見つめていると、私の前方を歩いていた幸人さんがとても優しい目をして姉に微笑みかけた。

微笑んだ幸人さんの横顔があまりにも綺麗で。私の胸をドクンと鳴らす。

歩きながら幸人さんの横顔に魅入っていた私は、足元に段差があることに気付かなかった。


「梨々香!?」

後ろを歩いていた母が私の名前を呼んだときには既に靴のつま先が段差に引っかかっていて。身体が前によろける。

それに気付いた幸人さんが瞬時に振り向いて、転びかけた私の肩を抱きとめてくれた。

近付いた幸人さんからは、ドキリとするくらいに甘くていい香りがした。

姉はいつも、こんなにも甘い彼の腕に抱きしめられているんだろうか。

ふと頭を過った邪な考えに、体温が上昇する。


「あ、あの……すみません」

慌てて飛び退いた私を見て、幸人さんが驚いたように瞬きをする。けれどすぐに優しく目を細めて私に笑いかけてきてくれた。


「気を付けて」

私に向けられた笑顔に。鼓膜をくすぐる低い声に。自分でも信じられないくらいに胸がドキドキと高鳴る。

相手は姉の婚約者だというのに。こんな感情を抱いてしまうなんて、絶対にダメだ。

そこから顔合わせが終わるまでのあいだ、私は終始ドキドキしていて、幸人さんの顔を真っ直ぐに見ることができなかった。

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