歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
第二章 歯が痛すぎて話せませんわ!!

 その日もいつものようにライオネル様が迎えにきて、馬車に乗り込んだ瞬間だった。

 小枝を踏んだようなパキッという音ともに、突然言葉を発することができないほどの激痛がわたくしを襲った。

 ズキズキと痛んでいるのは、口の中のようだ。とりあえずライオネル様をお待たせしたくなくて、馬車に乗り込み痛む元凶を探し出す。

 痛いのは……左側ですわね。頬かしら? いえ、違うわね。 これは、歯が痛いのだわ!
 でもどうして歯が痛むのかしら? 毎日口の中もしっかりケアしているし、今までこんなことはなかったのに。

 ほんの少し舌先で触れてもズキズキと痛みが増すので、これでは話すこともままならない。今日の授業はどうしようかと考えていると、強い視線を感じた。

 こんな狭い馬車の中でわたくしを見つめるのは、ライオネル様しかいない。痛みを堪えて顔を向ければ、バチッと視線が合う。

 歯は痛いけど、滅多にないことで心臓がドキッと跳ねた。
 まっすぐにわたくしを見つめるアイスブルーの瞳は、なにかを窺っているようだった。

 絡まる視線を堪能していたら、馬車がガタンッと揺れてほんの僅かな振動を受ける。それだけでズキーンと痛みが響いて、思わず俯いてしまった。
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