歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
第六章 あなたの隣にいる未来

「リア、来月の収穫祭なんだが……その、今年はいつもと違う趣向にしたいんだ」
「ええ、かまいませんわ。ライル様はどのようにされたいのですか?」
「もし嫌でなければ、街人たちがするように仮装してみたいと思っている」
「まあ! それは楽しそうですわ!」

 収穫祭とは毎年秋の終わりに開かれ、実りの季節を迎えられた感謝を捧げ、来年の豊作を祈願する祭りのことだ。もともとは地方の農産地帯で行われていたのだが、十年ほど前から王都でも開催されいる。
 領地に戻っていない貴族や、地方から出てきた民たちが祭りを盛り上げていた。

 民たちはその祭りで神々や妖精、悪魔やゴーストなどの格好を模倣して、大広場に設置される祭壇に祈りを捧げるのだ。この仮装が民の間では楽しみの一つになっており、毎年この時期になると衣装や小道具が飛ぶように売れる。

 そうねえ、ライル様はやっぱり神々の仮装が似合うかしら。そもそも神々しいから、なんの違和感もなく衣装を着こなせそうだわ。それならわたくしは、少し方向性を変えようかしら?

「わたくしも仮装に挑戦してみたいです」
「いいのか!? そうか、では、衣装は——」
「当日のお楽しみにしましょう! わたくしいいことを思いついたのです! ライル様を驚かせたいので、収穫祭まで内緒ですわ」

 ライル様はキョトンしたけれど、すぐに破顔して「わかった」と頷いた。ライル様がどんな格好をするか、とても気になるけれどここはグッと我慢だ。
 それにどうせなら、ライル様が驚くような仮装に仕上げたい。さらに他のご令嬢と被らないものがいい。
 そうだわ、シルビア様にも相談してみましょう!



< 173 / 208 >

この作品をシェア

pagetop